兵庫県知事との対談
「IDOカフェ 魅惑の鹿肉料理」
鹿肉料理の魅力や、丹波の食材を生かす取り組みについてお話ししました。
OUR STORY
見過ごされてきたものの中に、光を見つける。
無鹿リゾート店主・鴻谷佳彦の物語。
Why Musica exists
鹿肉を、ただ料理として提供したいのではありません。
無鹿リゾートは、食事をして、泊まって、それで終わる場所ではないと考えています。
丹波の山が育んだ命。季節ごとに表情を変える野菜。生産者や猟師の仕事。古い建物に積み重なった時間。そして、ここへ来てくださる方との出会い。
その一つひとつを料理と空間の中で感じ、日々の忙しさから少し離れて、自然体の自分へ戻っていただく。それが、私たちが目指す無鹿リゾートです。
01 — THE BEGINNING
1977年、兵庫県丹波市に生まれました。高校卒業後は日本料理の道へ進み、西宮の料亭で修業。その後、曾祖父の代から百年以上続く家業を継ぐために故郷へ戻り、四代目として厨房に立ちました。
転機は、兵庫県森林動物研究センターの研究者の方に勧められ、鹿肉を口にした日のことです。「硬くて、臭いもの」。それまで抱いていたイメージは、一口で覆されました。
「こんなにおいしいものが、なぜ知られていないのだろう。
このおいしさを、もっと多くの人に伝えたい。」
その思いから、一年間、ほぼ毎日のように鹿肉を調理しては食べ、試作を重ねました。生まれたレシピは千種類を超えます。そして2010年、日本初の鹿肉料理専門店「無鹿」を開きました。
始まりは、大きな計画ではありませんでした。ただ、まだ知られていないおいしさを、料理人としてきちんと届けたい。その一心でした。
誰かが「価値がない」と思うものにも、
まだ磨かれていない魅力がある。
02 — AFTER THE GUIDE
2016年、無鹿は「ミシュランガイド兵庫2016特別版」に掲載されました。当時、鹿料理専門店として掲載された初めての店となり、鹿肉料理という分野が広く知られる一つのきっかけにもなりました。
長く向き合ってきた食材が評価されたことは、もちろん大きな喜びでした。しかし、その喜びの後にやってきたのは、想像以上の重圧でした。

「ミシュランに載った店だから」。その言葉とともに、お客様の期待は高くなります。一皿ごとに、掲載店としての完成度を求められる。昨日と同じではいけない。もっとおいしく、もっと心に残る料理を。そう考えながら、改めて毎日の料理に向き合うようになりました。
自然の中で生きる鹿は、一頭ごとに肉質が異なります。季節によっても味や香りが変わります。決められた手順だけでは、同じ仕上がりになりません。肉を見て、触れて、その日の状態を読み、火入れを変える。料理人が学び続ける理由が、そこにあります。
同時に、「良い料理を作ること」と「店を続けること」は、別の難しさを持つことも知りました。経営、スタッフ、設備、地域との関係。守るべきものは厨房の外にもあります。何度も悩み、壁にぶつかりながら、それでも続けてこられたのは、料理を楽しみに足を運んでくださるお客様がいたからです。
ミシュラン掲載は、勲章ではありません。
「もっと努力しなさい」と、今も背中を押してくれる一冊です。
あの日の評価に恥じないように。そして何より、「無鹿に来てよかった」と思っていただけるように。今日も新しい調理法を考え、鹿肉の可能性を探し続けています。
03 — FINDING VALUE
料理の道を歩んできた一方で、古いものを直すことが昔から好きでした。四十年以上前のクラシックカーやバイクを修理する。壊れた端末を分解して、必要な人へ譲る。真空管アンプを作る。近頃は、近所の方から農機具の修理まで頼まれます。
「まだ使える」「直せば、もっと良くなる」。そう感じると、つい手を動かしてしまいます。
だからこそ、鹿肉に出会った時も、世間のイメージの奥に眠る本当の価値を信じることができました。何もないと言われる場所にも、古い建物にも、使われなくなった道具にも、価値は最初からそこにある。ただ、まだ見つけられていないだけなのだと思います。
04 — FOR THE REGION
鹿肉と向き合う中で、料理には地域を動かす力があるのではないかと考えるようになりました。これまで使われずにいたものへ価値を与え、生産、加工、販売までを地域の中でつなぐ。そうすれば、一皿の向こう側に新しい仕事や関係が生まれます。
その可能性を学び、農林水産省の「地産地消の仕事人」に選定され、6次産業化プロデューサーLevel 4の認定も受けました。しかし、肩書きを得ることが目的ではありません。料理人として現場に立ち続けながら、丹波で生まれた価値が地域の中を循環していく仕組みをつくることが大切だと考えています。
また、NPO法人Imagine丹波を設立し、子どもたちの探究活動やキャリア教育にも携わってきました。中学校・高校では十二年以上、非常勤講師として若い世代と向き合っています。
地域には、魅力ある仕事がたくさんあります。けれど、それを知らなければ、選ぶことはできません。自分の生まれた土地を「何もない場所」と決めつける前に、身近な人や仕事の中にある価値へ目を向けてほしい。鹿肉料理を通じて学んだことを、次の世代へ渡したいと思っています。
05 — WITH FAMILY
私自身、二匹の保護犬のフレンチブルドッグと暮らしています。旅へ出かけるたびに、「この子たちも一緒に行けたら」と何度も思ってきました。
犬と泊まれる宿は増えても、食事の時間まで同じ空間で過ごせる場所は、まだ多くありません。だから無鹿リゾートでは、愛犬も家族の一員として、できる限り一緒に過ごせることを大切にしています。
「周りに迷惑をかけないだろうか」「ゆっくり食事ができるだろうか」「この子も楽しんでくれるだろうか」。その不安を、少しでも安心へ変えたい。
料理人として、おいしい料理を届ける。宿として、心地よい時間を用意する。そして犬と暮らす一人として、「またこの子と一緒に来たい」と思える場所をつくる。それが、無鹿リゾートのおもてなしです。
愛犬との過ごし方 →06 — A PLACE FOR CONNECTION

無鹿リゾートの店内には、俳優・新木宏典さんの写真や作品、思い出の品を飾った小さなコーナーがあります。
新木さんが丹波市の観光アンバサダーを務められたことをきっかけに、少しずつ始まったこの場所。
今では、全国から訪れてくださるファンのみなさんと一緒に飾り付けをしながら育てている、無鹿リゾートの大切な一角になりました。

新木さんは40歳という節目に、丹波市の魅力を伝える本を自ら制作し、出版されました。
自分が訪れた土地を、ただ紹介するだけではなく、実際に歩き、人に会い、感じたことを一冊の形にして残す。その真摯な姿勢と行動力を、私たちは心から尊敬しています。
実際に無鹿リゾートへ食事に来てくださったときも、飾らず、気取らず、誰に対しても自然に接してくださる、本当に裏表のない方でした。
画面や舞台の向こうにいる新木さんと、目の前でお話しする新木さんが少しも変わらないことに、私自身とても感動したのを覚えています。
このコーナーは、新木さんを応援するファンのみなさんにとって、丹波を訪れた思い出を残し、人と人がつながる小さな場所でもあります。
07 — FULL MOON NIGHT
料理人、生産者、醸造家、研究者、職人。さまざまな分野で挑戦を続ける人を迎え、料理をきっかけに命や地域、仕事、ものづくり、そして人生について語り合う。それが「満月ナイト」です。
ある夜、お客様が帰り際に「これ、貴族の最高の遊びやん」と笑ってくださいました。知への好奇心、食への好奇心、人への好奇心。そのすべてが満たされた時間だったのだと感じました。
料理を食べるだけでは終わらない。まだ知らなかった人や考え方に出会い、自分の世界が少し広がる。店主が本当に作りたかったものが、ようやく形になった夜でもありました。
To the values yet unknown
無鹿リゾートは、ただ食事をする場所でも、ただ泊まる宿でもありません。
誰かが見逃してしまうような価値を見つけ、磨き、料理や空間、人との出会いを通して次の世代へ渡していく場所です。
ここには、古い建物があります。丹波の自然があります。料理があり、愛犬との時間があり、さまざまな人との出会いがあります。
皆さまのお越しを、心よりお待ちしています。
Interviews & features
料理を通して伝えてきた、鹿肉の可能性と丹波への想い。
これまでに取材・対談いただいた映像をご覧いただけます。
鹿肉料理の魅力や、丹波の食材を生かす取り組みについてお話ししました。
丹波での仕事と、地域全体を楽しむ新しい滞在の形について紹介いただきました。
鹿肉料理と丹波の食の魅力を、無鹿リゾートの厨房からお伝えしています。
さらに詳しく
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